Vol. 40:ベンチャー企業が契約書締結時に絶対に気をつけたい2つのこと

最初に書いておきますが、契約書締結時においてベストなのは弁護士の方にチェックしていただくことです。
なぜなら、契約書はとても大きな力を持つ故に、会社を一発で機能不全に陥らせることも可能だからです。

とはいえ、全ての契約書をそうやって対応するのは時間もお金もない、というのが法務機能を有さない多くの企業にとって正直なところ。
特に小さな企業であれば経営者が目を通しているというところが実情であると考えています。
そこで、本記事では契約書を経営者が確認する際に絶対に注意しておくべき2点について書いていきます。

1. 賠償について

注意すべきなのは、賠償が発生する対象と条件と範囲とその算出方法です。
例えば範囲についてですが、なんらかのミスがあった際、直接その事象と関係がなくとも、例えばブランド毀損という名目で莫大な賠償金を請求される可能性があります。
なので、賠償範囲についてはそのミスによって直接発生したものに限り、また、その算出方法についても相手方に一任することなく、合理的な、可能であれば双方の協議や第三者によって計算されるべきです。

2. 契約の破棄について

契約がなんらかの枷となってしまった場合、もしくは、理不尽な条項が含まれていると気づいた場合にはその契約の破棄を検討することがあると思います。
しかし、例えば契約破棄は相手方しか行えないという条項がさらっと含まれている場合もあります。
そのため、双方から契約の破棄ができるという条項を盛り込み、また、ビジネスモデルや主体がどちらかによるのですが○ヶ月前の通知で破棄できるという条項も各社の状況に合わせて盛り込むべきです。

他の条項について

書面での連絡がマスト、という条項も多く含まれますが、こちらは内容によっては電子メールでのやり取りでも可、という形にすれば業務の妨げになる可能性が下がります。
あとは、契約内容に関する業務を例えば別会社に投げる、もしくは他社サービスを活用して行う可能性がある場合、そういったことが可能なのかもチェックしておくべきです。
あと、「努力する」とか「最善を尽くしていない」みたいな主観的な表現も、それがなんらかの大きな行動に反映される可能性がある場合は削る、もしくは定量的なものに変更した方がいいです。

まとめ

繰り返しになりますが、最も良いのは弁護士の方にしっかり確認していただくことです。
ただ、それが難しいのが実際だと思うので、例えば1度弁護士の方に見ていただく。
そしてそこでチェック項目を理解してそれからは類する契約は自分でやる、みたいなのも良い手段だと考えています。

あと、上ではこの2つに気をつけろと書いていますが、当然他条項もチェックした方がよいです。
ただ、そこに多くの時間をかけられないのが実情だと思うので、ぜひこちらを頭に浮かべながら確認してみてください。

さらに加えて、契約書類ってのはこちらの言うことが全て通るってことはあんまりなくて、先方との妥協点の探り合いになる可能性が高いです。
その際には、どの点は譲れて、どの点は譲れないのかを明確にした上で交渉に望まないとただただ時間を費やすだけになってしまうので、しっかりとした基準を持って交渉にあたりましょー!

Vol. 39:社内マニュアルを随時作成するための一石二鳥な方法

社長が持っておいた方が良いスキルとして、テキストやスライドでの説明能力ってのがあるな、と。
毎回口頭で説明するのはコストが高いし、伝言ゲームによる齟齬発生や漏れも防げる。

それに関連して、社内にマニュアルが存在するメリットは複数あって、何度も同じ説明をせずに済みますし引き継ぎや工程の見直しが容易になります。
ただ、マニュアルを作るにも当然工数が発生するので、そんなものを作るリソースはない、という方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
ただ、この方法を採ることにより、マニュアル資産が積み上がる以外のメリットも享受できます。

その方法とは「最初にやり方を説明した後に、被説明者にマニュアルを作ってもらう」ことです。
これにより、マニュアルができあがるだけでなく、説明者は被説明者が内容をきちんと理解できているかの確認もすることができます。
以前の会社では、業務に関連したマニュアルを100個以上作っていたので、例えば急な配置転換などがあったとしてもスムーズに進めることができていました。

ちなみに、「マニュアルに沿った業務」というとネガティブな印象を持つ方がいらっしゃるんですが、忌むべきは効率的でないマニュアルに沿ってしか仕事ができない状況です。
マニュアルが効率的でないなら変えればいいし、上記したように工程がマニュアルとして明文化されていた方がその改善は容易なので、マニュアルは作りまくった方が良いと思ってます。

Vol. 38:エクイティファイナンスによる調達を行うべきケースとは

以前も書きましたが、僕が持ってる懸念として「起業 = エクイティファイナンス(第三者割当増資による調達)実行」と考えてる人が最近多いよなというものがあります。
それ故に、それがもたらすメリットやデメリットについてあまり認識せずに進めてしまってるケースをわりと見ているので、ここではどういったケースでエクイティファイナンスを行うべきかという話を。
結論から言うと「会社をめちゃくちゃでかくするぞ!」という断固たる決意がないならばやらない方がいいです。

例えばあなたがサッカーを始めたいと思ったとします。
リフティングをまずやってみようかな、とか、草サッカーチームでも入ってみるか、とか、フットサルを試してみようかな、とか、そこには選択肢がたくさんあるわけです。
ですが、資金を外部から入れることによって、進むべき道は「ワールドカップを目指す」に固定されます。
なぜなら、投資家側は当然ビジネスなので、キャピタルゲインの最大化を目指しますし、スタートアップとは限られた時間の中で急速な成長を目指すための仕組みだからです。
ちなみに僕は某投資家の方に「時価総額1,000億円を目指さないのであれば投資はできない」と言われたことがあります。

そういった覚悟もないままに安易に調達してしまい、自分の人生で優先したいことと事業がずれたとしても、それでも走り続けなくてはなりません。
資本政策は不可逆だとよく言われますが、最も重要な意思決定は”そもそも外部から株式を用いた資金調達を行うか否か”です。

とはいえお金がないんです、みたいなのは筋が通らないと思っていて、想定していなかったイベントの結果として僕は起業後すぐにご出資をいただきましましたが、それに備えて社会人1年目でかなり切り詰めた生活を送り200万円程の貯金をしていました。
また、大学生の頃には15分/日くらいの作業で10万/月くらい稼げてたので、収益化はすぐに可能だとも思っていました。
俺がやったんだからみんなもやれ、という話ではなく、お金がないことは外部からの資金調達を行う理由にならない、ということです。
これを見て無理だー!と思う方は、正直スタートアップを始めてもうまくいかないと思いますし、そのミスマッチは誰も幸せにしない。

僕が創業期の資金調達について相談を受ける際はいつも「あなたが人生でやりたいことはなんですか?」という質問をします。
なぜなら、スタートアップは会社を急激に成長させるための劇薬であり、経営者その他を幸せにするための仕組みではないからです。

とはいえお金が必要だ、というケースはあると思うので、最初は政策金融公庫さんからの借入をお勧めします。
もちろん安易に考えるのはよくないですが、無担保無保証っていうほぼリスクのない状態で千万単位のお金が調達できるので、これをやらない手はない。
こういったお金を使いながら事業のPMFを進めていった方が、調達を行う際にも有利に交渉を進められますし、曖昧であった「起業」というものをより正確に認識できるので、人生のジレンマは発生しづらくなると思いますよー。

Vol.37:East Venturesは最高だ、という話をします

事業相談をちょこちょこいただく中で、「どこのVCがおすすめ or おすすめしないですか?」という質問をいただくことが多いです。
これってしょうがなくて、なぜかというと資金調達ってめっちゃブラックボックスですし、特にネガティブな話は表に出づらいんですよね。

で、僕はそれを聞かれる度に「East Venturesさん(以下EV社)が最高です」という話をしているので、主にお世話になった3名の方について書いておこうと思います。
念のため書いておくと、これはそういう依頼を受けたわけではもちろんなく、僕が勝手にやっていることなのであしからず。
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1. 太河さんがすごい。
2. 大柴さんがすごい。
3. 金子さんがすごい。
4. サポートがすごい。
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1. 太河さんがすごい。
後述するように僕はEV社の皆さんと近くで働いていた時間が長かったんですが、あれだけ実績を持ってらっしゃる方であるにも関わらず、スタートアップの振興のために今も大きな情熱を持って取り組んでいる姿を見て本当にかっこいいなと思ってます。
そして一見クールに見えるのですが和やかに接してくれる方で、話してくださる内容がめっちゃ面白い。

また、起業家のことを第一に考えてくれる方です。
ご出資をいただいた直後に「投資家のことを優先して考えすぎなくていい」と言われたことがあるんですが、ご出資者の立場でそれを言ってくれる方はなかなかいないよなー、と驚いたことを覚えています。
そもそも初回のご出資の時にも初めてお会いして30分くらいで決めていただき、ご出資後もなんらかの業務を強いてくることも全く無く、事業を進めるうえで非常に有難かったです。
2014年ごろにチームを解散した結果、人も、事業も、お金もない、という設立以来一番しんどかった時期に、「原口くんだから」と追加出資をしてくださったんですが、あれがなければ僕は間違いなくここにいないので本当に感謝しています。

2. 大柴さんがすごい
僕らが出資を受けた後にEV社にフェローとして入られたんですが、的確で客観的な意見をいただけてめちゃくちゃ助けられてました。
なんというかとても正直な方であると思っていて、言葉が信じられるんですよね。
僕の至らないところについても他意なく率直に伝えてくれるので、僕も素直に受け止めて改善していこうと思えてました。
アドバイスだけでなく、色々な方のご紹介もいただきとても有難かったです。

3. 金子さんがすごい
年が近いだけでなく、一時期同じ家で共同生活をしていたこともあり、一番フランクに相談させていただいてました。
例えばバイアウトの際にも何度も質問させてもらってとても助けられましたし、投資家としてどう思うのか、という点について色々と聞くことができ勉強になりました。

4. サポートがすごい
僕は厚かましくもこちらの恩恵を最も受けた男だと思うのですが、EV社は出資先用のコワーキングオフィスとシェアハウスを運営されており、長いことそちらを利用させていただいてました。
僕らがいた当時も、六本木駅間近のコワーキングオフィスにはメルカリさんをはじめたくさんの魅力的な企業が籍を置いており、さらにそこまで徒歩で通うことができる環境は仕事に集中する上でめちゃくちゃ有難かったです。
ちなみに、僕は運良く利用が可能でしたが、そうでないケースもあるかと思いますのでご留意ください。
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長々と書きましたが、それ以外にも当時は大学生インターンだった毛利さん、廣澤さんにも色々と助けられていました。
シードでのエクイティ調達を考えている企業の方は絶対に門を叩くべきだと思いますし、それ以外のフェーズであっても相談に行ってみる価値は大いにあると思いますので、資金調達にお悩みの方は連絡してみることをお勧めします!

Vol. 36:創業した会社の代表取締役社長を退任しました

少し前からの話となりますが、バイアウトから約2年が経ち、自身で創業した会社の代表取締役から離れ、今後は顧問として関わっていくこととなりました。
2012年4月に始まった会社ですので、約7年を経て僕と会社との関係は大きな節目を迎えたわけです。
今後は、今までとは少し変わった形でJapan Infoという事業を支えてまいります。

長いようで短いようで長いこの期間を、多くの方に支えていただきました。
簡単ではありますが、この場を借りて感謝を伝えさせてください。
僕が今ここにいるのは、時間の多寡、関係の濃淡にかかわらずあなたのおかげです。
本当にありがとうございます。

創業からここに至るまでの過程については既にまとめているので、ここでは省略します。
その代わりに、まずは僕が今「仕事」ということについて思うところ、そして今後の働き方について書いてみます。

僕は2011年卒でしたが、内定を早めにいただいたこともあり2010年にはがっつりと働き始めていました。
内定先で、当時の新規事業の立ち上げに携わりテレアポと訪問を繰り返す日々。
当時、就職先を考える上で「残業代が出ないこと」を必須条件にしていた僕は、とにかく働きまくりたかった。
20代のテーマを「仕事、仕事、仕事、」に定め、全てとは言わないまでも、ほとんどの時間をそれに費やしていました。

起業してからも、バイアウト後も含めて会社に泊まったことも数知れず。
もちろん、仕事というのはただ時間をかければいいというものではなく、僕の働き方が必ずしも良いものだとは思っていません。
ただ、某投資家の方と「スタートアップって意外と遊んでる人多いですよね」という話をしていた際に、「だから原口さんはバイアウトできたんじゃないですか?」と言われたことは記憶に残っていますし、過去の自分と情熱を燃やしてくれた仕事というものに感謝しています。

ただその一方、失ったものも多くありました。
結婚したいと思っていた彼女にも振られ、体力も落ち、仕事以外の経験をすることもなく約7年という時間をほぼ仕事だけに使ってきました。
なので今後しばらくは、人生の割合における仕事以外の時間を意識的に増やそうと思っています。
そもそも僕は仕事が好きな人間ではあるのでついもっと働きたくなってしまうのですが、30代のテーマを「欲張る」に定めたこともあり人間活動ももうちょっと頑張りたい。

じゃあ具体的にどんなことをやっていくのかについてですが、仕事については既に色々とアイディアがあるのでそれを順次立ち上げていこうかなと。
現在は福岡に拠点を移してもいるのですが、場所に囚われずビジネスをやっていくというのもチャレンジの1つ。
既にいくつか「出資したい」であったり「うちで働かないか」というお声がけをいただいており大変ありがたく感じているのですが、ひとまずは自分の資金で自分の事業を進めていきます。
仕事以外についても、ここ1ヶ月でフルマラソン、東京→福岡引っ越しと1,200キロ自転車横断、海外旅行、と無茶なスケジュールで取り組んでいたんですが、色々なことを進めていくつもりです。

まとめとしてですが、2012年にスタートアップを始めたことは僕の人生において本当に大きかったな、と。
辛いこともしんどいことも山ほどあったけれども、それでもこの道を選んだおかげで自分が「人生でやっていきたいことはなにか」がはっきりと見えるようになりました。
それについては、既に冗長な文章となってしまっているため改めてどこかで。

なんか色々難しい感じで書いてみましたが、僕は今幸せですし、今後もずっと幸せだろうなーという確信に近いものがあります。
オンラインだと堅く見えがちですが、僕の中身はたぶん小学生の頃からあまり変わってなくていつも笑ってる感じなので、ご無沙汰してしまっている方も含め今後も仲良くしてください。
ということで、皆さん改めてよろしくお願いしますー!

Vol.35:福岡移住や東京→福岡自転車横断など最近の動きについて

実は最近、身の回りの大きな変化の結果として時間を自由に使えており色々動いているので、中途半端な報告になってしまいますが簡単にそれぞれ書いておきます。
「仕事は?」という当然の疑問については、近日中に改めて書きますので少々お待ちください。

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1. 福岡移住しました
2. フルマラソン完走しました
3. 東京→福岡自転車横断チャレンジします
4. 今後について
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1. 福岡移住しました

表題の通りですが、福岡の警固という中心街近くに本日から住み始めています。
理由は、ここ8年くらい仕事だけを中心に人生を進めてきたけれども、状況が変わったので外部環境も大きく変えてみたくなった、というものですが実際はほぼ勢いです。
少し前までは東京を離れるなんて思いもしなかったのに、人の考えなんて変わるもんですね。
お会いしたい方もたくさんいるのにスケジュールの関係で先に福岡に来ることになってしまいましたが、東京にもちょこちょこ滞在予定なので皆さんまた遊んでください!
そして福岡にお立ち寄りの際にはお気軽にお声がけください。

2. フルマラソン完走しました

小5から大学卒業まで過ごした横浜を舞台としたマラソンに参加し、5時間50分という凡庸なタイムで完走しました。
去年の総走行距離が300キロ、今年のそれが150キロという圧倒的練習不足で臨んだので、最後、というか後半はほぼ気持ちだけで走ることに。
諦めそうになった瞬間もありましたが、裏目標であった6時間切りも達成できて良かった。

3. 東京→福岡自転車横断チャレンジします

これが一番何を言っているんだ感があるかと思いますが、自転車で東京から福岡までの1,200キロを11/4(日)から2週間くらいで駆け抜けます(予定&願望)。
なぜ?と聞かれればこれも「勢いです」としか答えようがないのですが、なぜか同行者も見つかってしまったのでもうやるしかない。
こちらについてはインスタのストーリーを中心に道中の記録を残そうと思うので、関心がある方は僕の名前でアカウント検索してみてください。
死にたくない。
ちなみにこのチャレンジのために、福岡居住開始2日目にして、わざわざ飛行機で東京に戻ります。
死にたくない。

4. 今後について

仕事に関するものは改めての報告に譲るのですが、今後はいろんなことをやっていこうと思っているのでビジネスとは関係のないことを書くブログをとりあえずのものですが立ち上げました。
こちらでは一人の人間として、例えば上記の自転車旅についてなど書いていくつもり。

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人生を考えるに、自分の魂を飼いならしたくないなーと。
やりたいことが多すぎて、100歳まで元気に生きたとしてもやり足らない予感ばかり。
まだまだ大人になりきれない僕ですがそれでも僕は僕のことを好きなので、今後も人生を楽しませていただきます。
繰り返しになりますが、仕事については改めて書きます!

Vol.34:”スタートアップ”とは一体なんなのか

前提として、ここでのスタートアップの定義とは、株式割当による資金調達を行った企業と置いています。
結論から言うと、会社を「劇的に」「急速に」大きくするための仕組みであって、それ以上でもそれ以下でもないです。

劇的とはどれくらいの成長を指すのかという話ですが、Y Combinatorでは3ヶ月の期間中、週次で5〜7%の成長を求められます。
ちなみに週次で7%の成長を続けた場合、3ヶ月後には約2.5倍、1年後には約35倍、2年後には約1,100倍の規模になっている計算です。

こういった成長を目指すためには、少しずつ利益を拡大して余剰資金を投資に回す、という方法ではスピードが全く足りません。
そのためにスタートアップが何をするかというと、自分たちの将来価値を算定し、株を差し出し、成長のための劇薬となる資金を得るわけです。
そしてアクセルを踏み続け、投下した資本に成長が見合っているかを評価し、そして評価され、新たな劇薬を得るために改めて資金調達に動きます。
そして閾値を超えた企業は上場やセルアウトという中間地点にたどり着く一方、多くのスタートアップは音もなく息を引き取ります。

そもそも、投資家目線では多くのスタートアップ企業は失敗します。
冒頭でも触れたY Combinatorの創設者であるポール・グレアム氏は、成功の定義を40億以上のバリエーションになることとした場合その成功率は7%だと述べています。
つまり、最も優れた投資家集団である彼らですら、”9割以上のスタートアップは失敗することを前提に”考えているわけです。
ただ、多くのスタートアップ創業者は自分はその一握りの企業であると信じて、最初の一歩を踏み出します。
(「なぜ急速な成長を目指さなくてはいけないのか」という点については論点がぼやけてしまうので別の機会に触れます。)

少し違った視点からも話しておくと、スタートアップは経営者を幸福にするための仕組みではありません。
いろんなものを、本当にいろんなものを犠牲にしてその成功に賭けたとしても、それが必ずしも報われる場所ではありません。

だから僕は、今からスタートアップを始めようとしている方に相談を受ける場合、その方が人生で何を成し遂げたいのかを重点的に聞きます。
その目的が世界を変えたいとか、大きな会社を創りたいということであればもちろん応援します。
そうではなく、より多くの時間を得たいとか、年収数千万円を目指したい、というような人であればスタートアップを始めることを僕は勧めません。
ただ、誤解がないようにしておきたいのですが、前者と後者どちらかが素晴らしいということではなく、それぞれが信じることをやればいいんです。

僕はスタートアップという仕組みやそれを選んだ過去の自分にとても感謝していますが、これが全ての人生にとって最適であるとは全く思っていません。
起業や独立なんて秒で決断すればいいと思っていますが、外部に株式を渡すかどうかはめちゃくちゃ熟考した方がいい。
この記事が、なんとなく起業=スタートアップだと思っている方にとって考えを深めるいいきっかけになれば幸いです。

Vol.33:スタートアップ起業家と投資家、立場が強いのはどっち?

議論の的になりがちなこの問いですが、結論から書くと投資家の方が強いです。
理由は以下の4つ。

1. お金を持ってる投資家の方が強い

資本主義経済下においてはお金を持っている方が強いです。
お金を出す側とお金を出してもらう側であれば、当然前者の方が有利。

2. 非実行時のリスクが小さい投資家の方が強い

起業家が資金調達に失敗したらそこに待っているのは破綻です。
しかし、もし投資家がその企業に出資をせずその企業が大成功したとしても「チャンスを逃した」だけであり、それがすぐに倒産に結びつくわけではありませんし、次のフェーズでも再度の出資検討が可能です。

それどころか、もしその企業が結果として潰れてしまったら、出資しなかったことが正解となるわけです。
何が言いたいかというと、起業家の方が崖っぷちに立たされているため下手に出てしまいがち。

3. 場数を踏んでいる投資家の方が強い

1つのスタートアップが上場までに資金調達を重ねたとして、最大で5回程度の資金調達を行います。
しかしその経験の蓄積はあれど各資金調達のフェーズは異なることが多いため、優先株の条件設定などそれぞれの段階において新たな知識のインプットや対応が必要となります。
その一方、投資家の方はある程度定まったフェーズにおいて投資を行うため、過去の経験を次回の投資に活かすことがより容易です。

1回目の資金調達と100回目の出資であれば当然そこには情報格差が生じ、その気になれば投資家がそれを利用して自分たちに有利な条件設定を行うことも可能です。
たまにシードで数十%の株式を投資家に持っていかれたという話を聞きますが、ここらへんが原因。
まぁさすがにその場合は起業家側の知識が不足しすぎているとも思いますが。

4. 選べる選択肢が多い投資家の方が強い

日本国内には、現在約115万もの株式会社が存在します。
その一方、日本ベンチャーキャピタル協会に登録している企業はわずか76社です。
もちろん、CVCやエンジェル投資家なども存在するため実際のお金の出し手はもっと多いですが、これらのバランスは明らかに釣り合っていません。
つまり、より貴重な存在である投資家の方が強いわけです。

まとめ

起業家が投資家に対して有利に話を進めるためには、めちゃくちゃイケてるビジネスを作るしかありません。
しかし、もはやスタートアップ界の伝説ですらあるメルカリさんですら、出資を断られることもあったわけです。

ちなみに、投資家の方は「自分たちの方が強いです」なんてことは絶対に言わないわけです。
さらに、起業家も「起業家と投資家は対等」と一般的に言われていることや、もともと弱い立場であるので「投資家の方が強いです」なんてなかなか言えない。

念のため書いておくと、この文章を通じてどちらかを非難するつもりは全くありません。
ただ、構造としてこのような図式が成り立っているということは理解しておくべきだと考えています。
これは違うだろというご指摘があればぜひコメントいただきたいです。

Vol.32:“スタートアップ村”におけるしがらみと僕の立ち位置について

僕は学生の頃は個人で事業運営を行い、そして2012年にスタートアップ企業を立ち上げ、複数社さまからの資金調達や事業譲渡、バイアウトを経て、現在は投資家の方と直接的な資本関係は持たずに事業を行っています。
また、将来的には自分で再度起業していわゆるシリアルアントレプレナーになるつもりですが、その際には株式による資金調達を行うつもりは特にありません。

次の起業では色んな事業を行うつもりで、その中のいずれかの事業が資本を大きく投下すべきと判断したらそれを行う可能性もあります。
しかし、要するに何が言いたいかというと、スタートアップ村を経験した上で、しがらみに囚われずに自由に動くことができる立ち位置にあるということです。

日本でも盛り上がりを見せるスタートアップシーンですが、僕はそこに多くの問題点があると考えています。
例えば、起業家の方が投資家の方にひどい扱いをされたとしても、なかなか公言できません。
なぜなら、それを明らかにすることによって他の投資家からの調達も含めて難しくなり、結果的に破綻してしまうというリスクを抱えているからです。
匿名であればよいのでは?という指摘もありますが、当然当事者の方同士であれば誰が言ったかは分かるので、それは健全な仕組みづくりのために機能しないわけです。

そこで僕が何をしたいかというと、中立的な立場からスタートアップ村の現状を伝えていくことです。
特定の企業や個人を貶めるのでもなく、ゴシップを広めるのでもなく、ブラックボックスになりがちな情報を発信していきたい。
僕がスタートアップというものに感謝しているということも事実なので、それを通じて多くの人にスタートアップや起業というものがより正確に伝わればなーと考えています。

個人事業主、スタートアップ起業家、バイアウト、そしてエンジェル投資家としての経験もあり、その上でこういった立ち位置で動ける人ってほぼいないと思ってるんですよね。
役割論者ではないけれども、せっかく得た経験を世に還元していくことは面白いんじゃないかなーと思ってます。

Vol.31:スタートアップでは(あまり)やりたい事ができない理由

まず「スタートアップ」というものの定義から始めますが、ここでは外部から株式割当による資金調達を行い、将来的になんらかのEXITを目指すものとして置きます。
つまり、小さな成功ではなく、大きな成功を目指すためのものです。

じゃあなぜやりたい事ができないのかという話なのですが、その理由は勝負をかけるべき領域が限られるからです。
ポール・グレアム氏なども言っていますが、ビジネスを始める上でどの市場で勝負すべきは非常に重要です。
特に、大きな成長を目指すスタートアップ経営においては、小さな市場ではなく大きな市場での勝負が(本来)常に求められます。
そのため、起業家が選択できる市場は現在であればFinTech、ヘルスケア、ECなど限られたカテゴリーのみとなります。

もちろん、その限られたカテゴリーに対してあなたがもともと興味を持っていれば、自分がやりたい事業をスタートアップとして運営することが可能です。
しかし、それらに関心がない場合であっても、大きな事業を創ることが最も重要であるスタートアップにおいては、それらの領域から何かを選び、事業を進めていかなくてはいけません。

起業家には2つのタイプがあります。
1つは自分のやりたいことをベースに事業を創る人。
そしてもう1つはトレンドを見据え事業を創る人。
もし、あなたが自分を前者寄りだと思うのであれば、スタートアップでの事業運営はあまりおすすめしません。
スタートアップをすることが、起業の目的ではないので。