Vol. 38:エクイティファイナンスによる調達を行うべきケースとは

以前も書きましたが、僕が持ってる懸念として「起業 = エクイティファイナンス(第三者割当増資による調達)実行」と考えてる人が最近多いよなというものがあります。
それ故に、それがもたらすメリットやデメリットについてあまり認識せずに進めてしまってるケースをわりと見ているので、ここではどういったケースでエクイティファイナンスを行うべきかという話を。
結論から言うと「会社をめちゃくちゃでかくするぞ!」という断固たる決意がないならばやらない方がいいです。

例えばあなたがサッカーを始めたいと思ったとします。
リフティングをまずやってみようかな、とか、草サッカーチームでも入ってみるか、とか、フットサルを試してみようかな、とか、そこには選択肢がたくさんあるわけです。
ですが、資金を外部から入れることによって、進むべき道は「ワールドカップを目指す」に固定されます。
なぜなら、投資家側は当然ビジネスなので、キャピタルゲインの最大化を目指しますし、スタートアップとは限られた時間の中で急速な成長を目指すための仕組みだからです。
ちなみに僕は某投資家の方に「時価総額1,000億円を目指さないのであれば投資はできない」と言われたことがあります。

そういった覚悟もないままに安易に調達してしまい、自分の人生で優先したいことと事業がずれたとしても、それでも走り続けなくてはなりません。
資本政策は不可逆だとよく言われますが、最も重要な意思決定は”そもそも外部から株式を用いた資金調達を行うか否か”です。

とはいえお金がないんです、みたいなのは筋が通らないと思っていて、想定していなかったイベントの結果として僕は起業後すぐにご出資をいただきましましたが、それに備えて社会人1年目でかなり切り詰めた生活を送り200万円程の貯金をしていました。
また、大学生の頃には15分/日くらいの作業で10万/月くらい稼げてたので、収益化はすぐに可能だとも思っていました。
俺がやったんだからみんなもやれ、という話ではなく、お金がないことは外部からの資金調達を行う理由にならない、ということです。
これを見て無理だー!と思う方は、正直スタートアップを始めてもうまくいかないと思いますし、そのミスマッチは誰も幸せにしない。

僕が創業期の資金調達について相談を受ける際はいつも「あなたが人生でやりたいことはなんですか?」という質問をします。
なぜなら、スタートアップは会社を急激に成長させるための劇薬であり、経営者その他を幸せにするための仕組みではないからです。

とはいえお金が必要だ、というケースはあると思うので、最初は政策金融公庫さんからの借入をお勧めします。
もちろん安易に考えるのはよくないですが、無担保無保証っていうほぼリスクのない状態で千万単位のお金が調達できるので、これをやらない手はない。
こういったお金を使いながら事業のPMFを進めていった方が、調達を行う際にも有利に交渉を進められますし、曖昧であった「起業」というものをより正確に認識できるので、人生のジレンマは発生しづらくなると思いますよー。

Vol.37:East Venturesは最高だ、という話をします

事業相談をちょこちょこいただく中で、「どこのVCがおすすめ or おすすめしないですか?」という質問をいただくことが多いです。
これってしょうがなくて、なぜかというと資金調達ってめっちゃブラックボックスですし、特にネガティブな話は表に出づらいんですよね。

で、僕はそれを聞かれる度に「East Venturesさん(以下EV社)が最高です」という話をしているので、主にお世話になった3名の方について書いておこうと思います。
念のため書いておくと、これはそういう依頼を受けたわけではもちろんなく、僕が勝手にやっていることなのであしからず。
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1. 太河さんがすごい。
2. 大柴さんがすごい。
3. 金子さんがすごい。
4. サポートがすごい。
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1. 太河さんがすごい。
後述するように僕はEV社の皆さんと近くで働いていた時間が長かったんですが、あれだけ実績を持ってらっしゃる方であるにも関わらず、スタートアップの振興のために今も大きな情熱を持って取り組んでいる姿を見て本当にかっこいいなと思ってます。
そして一見クールに見えるのですが和やかに接してくれる方で、話してくださる内容がめっちゃ面白い。

また、起業家のことを第一に考えてくれる方です。
ご出資をいただいた直後に「投資家のことを優先して考えすぎなくていい」と言われたことがあるんですが、ご出資者の立場でそれを言ってくれる方はなかなかいないよなー、と驚いたことを覚えています。
そもそも初回のご出資の時にも初めてお会いして30分くらいで決めていただき、ご出資後もなんらかの業務を強いてくることも全く無く、事業を進めるうえで非常に有難かったです。
2014年ごろにチームを解散した結果、人も、事業も、お金もない、という設立以来一番しんどかった時期に、「原口くんだから」と追加出資をしてくださったんですが、あれがなければ僕は間違いなくここにいないので本当に感謝しています。

2. 大柴さんがすごい
僕らが出資を受けた後にEV社にフェローとして入られたんですが、的確で客観的な意見をいただけてめちゃくちゃ助けられてました。
なんというかとても正直な方であると思っていて、言葉が信じられるんですよね。
僕の至らないところについても他意なく率直に伝えてくれるので、僕も素直に受け止めて改善していこうと思えてました。
アドバイスだけでなく、色々な方のご紹介もいただきとても有難かったです。

3. 金子さんがすごい
年が近いだけでなく、一時期同じ家で共同生活をしていたこともあり、一番フランクに相談させていただいてました。
例えばバイアウトの際にも何度も質問させてもらってとても助けられましたし、投資家としてどう思うのか、という点について色々と聞くことができ勉強になりました。

4. サポートがすごい
僕は厚かましくもこちらの恩恵を最も受けた男だと思うのですが、EV社は出資先用のコワーキングオフィスとシェアハウスを運営されており、長いことそちらを利用させていただいてました。
僕らがいた当時も、六本木駅間近のコワーキングオフィスにはメルカリさんをはじめたくさんの魅力的な企業が籍を置いており、さらにそこまで徒歩で通うことができる環境は仕事に集中する上でめちゃくちゃ有難かったです。
ちなみに、僕は運良く利用が可能でしたが、そうでないケースもあるかと思いますのでご留意ください。
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長々と書きましたが、それ以外にも当時は大学生インターンだった毛利さん、廣澤さんにも色々と助けられていました。
シードでのエクイティ調達を考えている企業の方は絶対に門を叩くべきだと思いますし、それ以外のフェーズであっても相談に行ってみる価値は大いにあると思いますので、資金調達にお悩みの方は連絡してみることをお勧めします!

Vol. 36:創業した会社の代表取締役社長を退任しました

少し前からの話となりますが、バイアウトから約2年が経ち、自身で創業した会社の代表取締役から離れ、今後は顧問として関わっていくこととなりました。
2012年4月に始まった会社ですので、約7年を経て僕と会社との関係は大きな節目を迎えたわけです。
今後は、今までとは少し変わった形でJapan Infoという事業を支えてまいります。

長いようで短いようで長いこの期間を、多くの方に支えていただきました。
簡単ではありますが、この場を借りて感謝を伝えさせてください。
僕が今ここにいるのは、時間の多寡、関係の濃淡にかかわらずあなたのおかげです。
本当にありがとうございます。

創業からここに至るまでの過程については既にまとめているので、ここでは省略します。
その代わりに、まずは僕が今「仕事」ということについて思うところ、そして今後の働き方について書いてみます。

僕は2011年卒でしたが、内定を早めにいただいたこともあり2010年にはがっつりと働き始めていました。
内定先で、当時の新規事業の立ち上げに携わりテレアポと訪問を繰り返す日々。
当時、就職先を考える上で「残業代が出ないこと」を必須条件にしていた僕は、とにかく働きまくりたかった。
20代のテーマを「仕事、仕事、仕事、」に定め、全てとは言わないまでも、ほとんどの時間をそれに費やしていました。

起業してからも、バイアウト後も含めて会社に泊まったことも数知れず。
もちろん、仕事というのはただ時間をかければいいというものではなく、僕の働き方が必ずしも良いものだとは思っていません。
ただ、某投資家の方と「スタートアップって意外と遊んでる人多いですよね」という話をしていた際に、「だから原口さんはバイアウトできたんじゃないですか?」と言われたことは記憶に残っていますし、過去の自分と情熱を燃やしてくれた仕事というものに感謝しています。

ただその一方、失ったものも多くありました。
結婚したいと思っていた彼女にも振られ、体力も落ち、仕事以外の経験をすることもなく約7年という時間をほぼ仕事だけに使ってきました。
なので今後しばらくは、人生の割合における仕事以外の時間を意識的に増やそうと思っています。
そもそも僕は仕事が好きな人間ではあるのでついもっと働きたくなってしまうのですが、30代のテーマを「欲張る」に定めたこともあり人間活動ももうちょっと頑張りたい。

じゃあ具体的にどんなことをやっていくのかについてですが、仕事については既に色々とアイディアがあるのでそれを順次立ち上げていこうかなと。
現在は福岡に拠点を移してもいるのですが、場所に囚われずビジネスをやっていくというのもチャレンジの1つ。
既にいくつか「出資したい」であったり「うちで働かないか」というお声がけをいただいており大変ありがたく感じているのですが、ひとまずは自分の資金で自分の事業を進めていきます。
仕事以外についても、ここ1ヶ月でフルマラソン、東京→福岡引っ越しと1,200キロ自転車横断、海外旅行、と無茶なスケジュールで取り組んでいたんですが、色々なことを進めていくつもりです。

まとめとしてですが、2012年にスタートアップを始めたことは僕の人生において本当に大きかったな、と。
辛いこともしんどいことも山ほどあったけれども、それでもこの道を選んだおかげで自分が「人生でやっていきたいことはなにか」がはっきりと見えるようになりました。
それについては、既に冗長な文章となってしまっているため改めてどこかで。

なんか色々難しい感じで書いてみましたが、僕は今幸せですし、今後もずっと幸せだろうなーという確信に近いものがあります。
オンラインだと堅く見えがちですが、僕の中身はたぶん小学生の頃からあまり変わってなくていつも笑ってる感じなので、ご無沙汰してしまっている方も含め今後も仲良くしてください。
ということで、皆さん改めてよろしくお願いしますー!