Vol. 42:地方でのスタートアップ起業が不利な理由3つ

以前から書いているように、東京から福岡に本格的に移住して1ヶ月半ほどが過ぎました。
福岡は他地方と比較して恵まれている方だとは思うんですが、いろんな方とお話する中でやっぱり東京以外でのスタートアップは難しいよなーと感じたのでその理由を3つあげてみます。

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1. “先輩”が少ない
スタートアップ経営の情報ってブラックボックス化しやすいんですよね。
なぜなら、資金調達とかは秘密保持契約でがっつり縛られちゃいますし、特にネガティブな情報は表に出てきづらい。
じゃあどうやって情報を集めるかというと人に直接聞くしかありません。
僕自身も、いざバイアウト交渉に臨むというタイミングで公の情報があまりにもなかったので、バイアウト経験者の方に相談させていただいてました。

ただ、現在スタートアップ経営者はほぼ東京にいるというのが現状なので、地方だと気軽に相談できる先輩、もしくは仲間が少ないです。
そのため、情報のキャッチアップが難しく、経営の難易度が上がります。

2. 投資家が少ない
こちらも1と似たような問題なのですが、東京にほとんどの投資家が集まっている以上、その方たちと話すためには東京に行かなくてはいけません。
しかし、特にシード期のベンチャーにおいては移動時間の長さや交通費は大きな障害となります。
資金調達というのは1社と話せば良いというものではなく、複数社の方と何度も話をすることで完了するケースがほとんどです。
そのため、東京以外で資金調達を行うことはハードルが高く、これも地方発スタートアップを運営するうえで障壁となります。
少し話は逸れますが、だからこそ地方スタートアップを活性化させるというF VenturesさんやDOGANさんの活動は意義深いものだなと感じます。

3. クライアントが少ない
これが一番大きな問題だと思いますが、営業での販売や事業提携をする対象が、地方よりも東京の方が圧倒的に多いんですよね。
2016年のデータだと東京の企業数はは全国360万のうち42万と10%強ですが、大企業に限ると1.1万の企業のうち4,500と40%を占めます。

また、こちらのデータだと新製品を導入しやすいであろうIT系の企業に限ると6割強の企業が関東に位置しています。
これはIT系企業に勤めるリテラシーの高い方も東京に集中しているということを意味するので、やはり東京の方がビジネスはやりやすいです。
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地方での勝ち筋として、東京からのタイムマシン経営はうまくいくんじゃないかと感じています。
海外から、もしくは海外への、というタイムマシン経営は年々難しくなっていますが、オフラインでのビジネスが必要になるものをいち早く東京から持ってくるってのはユーザー属性も近いのでやりやすいと思うので。
ただ、それがスタートアップという大きな市場を狙っていく仕組みにおいても機能するかは疑問です。
将来的に、都市圏でのそれにバイアウトするという目標であれば成り立つと思うんですが、それだとどうしても小粒になっちゃうんですよね。

僕自身も福岡に移住してきていますし、単純な起業ということであれば地方にも大いに芽はあると感じています。
しかし、スタートアップというものを本気でやりたいのであれば東京に行くべきというのはかなりの確度で正解だと思っています。

Vol. 41:スタートアップ起業家がメンタルを病みやすい6つの理由

少し前から起業家のメンタルヘルスに関して書かれた記事が散見されると思っていて、今日はそこについての話を。
ちなみに、以下のリンクあたりがそれで、これらによると起業家の3〜5割程度がメンタルになんらかの問題を抱えているそうです。
成功話の裏側は語られない ── 世間には知らされない起業家のメンタルヘルス事情
「起業家うつ」増加の実態、メンタルヘルスを損なう6つの事情

実際僕も2014年の夏あたりは結構大変な精神状況で、いやだいやだと思いながらメンタルクリニックに行ってみたりもしたので、そこらへんの経験も踏まえて書いてみます。
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1. ストレスや負荷がでかい
2. 構造的に事業が安定しない
3. 相談できる人が少ない
4. 理解してくれる人が少ない
5. 弱みを見せることが苦手な人が多い
6. 逃げ道が少ない
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1. ストレスや負荷がでかい

もちろん、どこかの会社に属して働くのは楽だ!と言いたいわけではないですが、やはりそこに存在するストレスはやや異なります。
毎月減っていく現金、組織のこじれ、事業将来についての不安。
さらに、多くの場合において(特にうまくいっていない時ほど)経営者のストレスや仕事量は多くなる傾向にあります。

2. 構造的に事業が安定しない

1と関連した項目ですが、スタートアップでは黒字を出さないことが基本です。
Amazonがその最たる例ですが、黒字を出す余裕があるのであれば将来への投資を行い事業拡大速度を上げることを求められるからです。
そうなると事業継続のために資金調達という不安定な選択肢に、企業の将来を委ねる状況に陥ってしまいがちです。

3. 相談できる人が少ない

しんどい時に社長が相談できる相手の選択肢は少ないです。
なぜなら、自分や自社を信じてくれているメンバーに、そこへの不安を漏らすことはよっぽどの信頼関係がないとできないからです。
また、投資家に相談することも難しいと思っていて、なぜならそこで新規・追加投資の芽が摘まれる可能性があるからです。

4. 理解してくれる人が少ない

スタートアップ社長が抱える悩みは少数派で、それを理解してくれる人はほぼいません。
例えば僕も冒頭で述べたようにメンタルクリニックに行きましたが、「資金調達とはなんなのか」について説明して面談時間は終わりました。
もちろん、同じ立場であるスタートアップ経営者であればその悩みを理解してくれる人は多いですが、基本的に彼らも忙しいので毎回頼るのは難しい。
とはいえ僕は彼らを頼ってそこに助けられてきたのでごめんなさいだけどとても感謝しています。

5. 弱みを見せることが苦手な人が多い

僕はオンラインでは真面目で固そうに見えるんじゃないかと思いますが、普段は明るくて冗談ばかり言うようなタイプです。
なので自分の暗い話をするってのがどうにも苦手でしたし、周りの経営者を見てても自分の弱いところを見せられないタイプが多い印象を持っています。
例えば僕は大学受験時の夏に父親が突然死しているんですが、その時も周りの人にはほとんど言えませんでした。
ただ、起業後のしんどい時に「あ、1人で抱えてたら死ぬわ」と思い人に相談できるようになったので、これは起業して起こった良い変化の1つだなーと思っています。

6. 逃げ道が少ない

僕はどこかの会社に勤めている友人が仕事でとても苦しんでいる場合、早めに辞めた方がいいという話をします。
冷たいかもしれませんが、会社はその人がいなくてもなんとか回るしその方の健康・人生のほうが大事だと思うからです。
ただ、その方が会社を経営している場合はなかなかそのアドバイスはしづらいです。
もちろん、その方の人生が大事だということに変わりはないのですが、代表者が辞めるインパクトはその会社にとって非常に大きいので。
とはいえ命よりも大事なものはないのでそこにこだわり続ける必要はないと思っていますが、その選択を取りづらい気持ちは痛いほどわかります。

まとめ

ちょっと長くなったので、そこからどのように立ち直ったかについてはまた改めて書くつもりですし、ここらへんを解決できるサービスを直近でやろうと思ってます。
あと、しんどい方はお気軽に頼ってもらって大丈夫なので遠慮なくご連絡をー!

Vol. 40:ベンチャー企業が契約書締結時に絶対に気をつけたい2つのこと

最初に書いておきますが、契約書締結時においてベストなのは弁護士の方にチェックしていただくことです。
なぜなら、契約書はとても大きな力を持つ故に、会社を一発で機能不全に陥らせることも可能だからです。

とはいえ、全ての契約書をそうやって対応するのは時間もお金もない、というのが法務機能を有さない多くの企業にとって正直なところ。
特に小さな企業であれば経営者が目を通しているというところが実情であると考えています。
そこで、本記事では契約書を経営者が確認する際に絶対に注意しておくべき2点について書いていきます。

1. 賠償について

注意すべきなのは、賠償が発生する対象と条件と範囲とその算出方法です。
例えば範囲についてですが、なんらかのミスがあった際、直接その事象と関係がなくとも、例えばブランド毀損という名目で莫大な賠償金を請求される可能性があります。
なので、賠償範囲についてはそのミスによって直接発生したものに限り、また、その算出方法についても相手方に一任することなく、合理的な、可能であれば双方の協議や第三者によって計算されるべきです。

2. 契約の破棄について

契約がなんらかの枷となってしまった場合、もしくは、理不尽な条項が含まれていると気づいた場合にはその契約の破棄を検討することがあると思います。
しかし、例えば契約破棄は相手方しか行えないという条項がさらっと含まれている場合もあります。
そのため、双方から契約の破棄ができるという条項を盛り込み、また、ビジネスモデルや主体がどちらかによるのですが○ヶ月前の通知で破棄できるという条項も各社の状況に合わせて盛り込むべきです。

他の条項について

書面での連絡がマスト、という条項も多く含まれますが、こちらは内容によっては電子メールでのやり取りでも可、という形にすれば業務の妨げになる可能性が下がります。
あとは、契約内容に関する業務を例えば別会社に投げる、もしくは他社サービスを活用して行う可能性がある場合、そういったことが可能なのかもチェックしておくべきです。
あと、「努力する」とか「最善を尽くしていない」みたいな主観的な表現も、それがなんらかの大きな行動に反映される可能性がある場合は削る、もしくは定量的なものに変更した方がいいです。

まとめ

繰り返しになりますが、最も良いのは弁護士の方にしっかり確認していただくことです。
ただ、それが難しいのが実際だと思うので、例えば1度弁護士の方に見ていただく。
そしてそこでチェック項目を理解してそれからは類する契約は自分でやる、みたいなのも良い手段だと考えています。

あと、上ではこの2つに気をつけろと書いていますが、当然他条項もチェックした方がよいです。
ただ、そこに多くの時間をかけられないのが実情だと思うので、ぜひこちらを頭に浮かべながら確認してみてください。

さらに加えて、契約書類ってのはこちらの言うことが全て通るってことはあんまりなくて、先方との妥協点の探り合いになる可能性が高いです。
その際には、どの点は譲れて、どの点は譲れないのかを明確にした上で交渉に望まないとただただ時間を費やすだけになってしまうので、しっかりとした基準を持って交渉にあたりましょー!

Vol. 39:社内マニュアルを随時作成するための一石二鳥な方法

社長が持っておいた方が良いスキルとして、テキストやスライドでの説明能力ってのがあるな、と。
毎回口頭で説明するのはコストが高いし、伝言ゲームによる齟齬発生や漏れも防げる。

それに関連して、社内にマニュアルが存在するメリットは複数あって、何度も同じ説明をせずに済みますし引き継ぎや工程の見直しが容易になります。
ただ、マニュアルを作るにも当然工数が発生するので、そんなものを作るリソースはない、という方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
ただ、この方法を採ることにより、マニュアル資産が積み上がる以外のメリットも享受できます。

その方法とは「最初にやり方を説明した後に、被説明者にマニュアルを作ってもらう」ことです。
これにより、マニュアルができあがるだけでなく、説明者は被説明者が内容をきちんと理解できているかの確認もすることができます。
以前の会社では、業務に関連したマニュアルを100個以上作っていたので、例えば急な配置転換などがあったとしてもスムーズに進めることができていました。

ちなみに、「マニュアルに沿った業務」というとネガティブな印象を持つ方がいらっしゃるんですが、忌むべきは効率的でないマニュアルに沿ってしか仕事ができない状況です。
マニュアルが効率的でないなら変えればいいし、上記したように工程がマニュアルとして明文化されていた方がその改善は容易なので、マニュアルは作りまくった方が良いと思ってます。