Vol. 43:”良い”事業アイディアのつくりかた 〜前編〜

少し前に「アイディア」というテーマでパネルディスカッションに登壇させていただきました。
その中でもいくつかのトピックがあったんですが「どうやってアイディアを考えているのか」という内容について、補足もしながら話した内容を書いていきます。
ちなみにここでは、僕は起業家として事業に関するアイディアという観点で話をしています。

まず、誰にとっても同様に”良い”アイディアというものはありません。
そこを整理する上で、まずは3つの軸で自分を見つめる必要があります。

1つめはそのアイディアでいつまでに何を得たいのかです。
それにより、月収100万を得たいのか、年商数億円を目指すのか、ユニコーン企業を目指すのかで考えるべきアイディアは全く異なります。
目標としておく項目は売上に限らず、例えばメルチャリさんはそこでの収益というよりもメルカリ経済圏の構成や認知度の向上を主目的としていると考えています。
例えば1年で市場を独占して利益が5,000万円/年となったら個人としては大成功の部類だと思いますが、これがリクルートさんでの新規事業であればたぶん撤退します。
つまり、目指す場所に応じて”良い”アイディアか否かは全く異なるんです。

2つめはやりたいことをやるのか勝ちにいくのかです。
起業家には2つのパターンがあって、自分の夢や理想を実現したい人と、とにかく事業を大きくしたい人。
こちらは完全なトレードオフではありませんが、後者は要するにトレンドや勝ちパターンにのっかるということです。
例えば◯◯県の◯◯産業を変えたいという事業はグローバルなものにはなりにくいですが、そこに価値がないかといえば当然そんなことはないです。

3つめは自分が得意なことはなにかです。
技術が強みなのにメディア事業をやってもあまり活かせないですし、営業が強みなのにC向けのアプリをやっても能力を活かせません。
もちろん、やりたいことを優先すべきですが勝ちやすさという点では重要です。

上記3つの軸についてしっかり考えることによって、はじめて”良い”アイディアを考えることができるようになります。
次は具体的にどのようにアイディアを考えていくべきについてなんですが、この時点でそこそこ長くなってしまっているので続きはまた次回。

Vol. 42:地方でのスタートアップ起業が不利な理由3つ

以前から書いているように、東京から福岡に本格的に移住して1ヶ月半ほどが過ぎました。
福岡は他地方と比較して恵まれている方だとは思うんですが、いろんな方とお話する中でやっぱり東京以外でのスタートアップは難しいよなーと感じたのでその理由を3つあげてみます。

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1. “先輩”が少ない
スタートアップ経営の情報ってブラックボックス化しやすいんですよね。
なぜなら、資金調達とかは秘密保持契約でがっつり縛られちゃいますし、特にネガティブな情報は表に出てきづらい。
じゃあどうやって情報を集めるかというと人に直接聞くしかありません。
僕自身も、いざバイアウト交渉に臨むというタイミングで公の情報があまりにもなかったので、バイアウト経験者の方に相談させていただいてました。

ただ、現在スタートアップ経営者はほぼ東京にいるというのが現状なので、地方だと気軽に相談できる先輩、もしくは仲間が少ないです。
そのため、情報のキャッチアップが難しく、経営の難易度が上がります。

2. 投資家が少ない
こちらも1と似たような問題なのですが、東京にほとんどの投資家が集まっている以上、その方たちと話すためには東京に行かなくてはいけません。
しかし、特にシード期のベンチャーにおいては移動時間の長さや交通費は大きな障害となります。
資金調達というのは1社と話せば良いというものではなく、複数社の方と何度も話をすることで完了するケースがほとんどです。
そのため、東京以外で資金調達を行うことはハードルが高く、これも地方発スタートアップを運営するうえで障壁となります。
少し話は逸れますが、だからこそ地方スタートアップを活性化させるというF VenturesさんやDOGANさんの活動は意義深いものだなと感じます。

3. クライアントが少ない
これが一番大きな問題だと思いますが、営業での販売や事業提携をする対象が、地方よりも東京の方が圧倒的に多いんですよね。
2016年のデータだと東京の企業数はは全国360万のうち42万と10%強ですが、大企業に限ると1.1万の企業のうち4,500と40%を占めます。

また、こちらのデータだと新製品を導入しやすいであろうIT系の企業に限ると6割強の企業が関東に位置しています。
これはIT系企業に勤めるリテラシーの高い方も東京に集中しているということを意味するので、やはり東京の方がビジネスはやりやすいです。
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地方での勝ち筋として、東京からのタイムマシン経営はうまくいくんじゃないかと感じています。
海外から、もしくは海外への、というタイムマシン経営は年々難しくなっていますが、オフラインでのビジネスが必要になるものをいち早く東京から持ってくるってのはユーザー属性も近いのでやりやすいと思うので。
ただ、それがスタートアップという大きな市場を狙っていく仕組みにおいても機能するかは疑問です。
将来的に、都市圏でのそれにバイアウトするという目標であれば成り立つと思うんですが、それだとどうしても小粒になっちゃうんですよね。

僕自身も福岡に移住してきていますし、単純な起業ということであれば地方にも大いに芽はあると感じています。
しかし、スタートアップというものを本気でやりたいのであれば東京に行くべきというのはかなりの確度で正解だと思っています。

Vol. 41:スタートアップ起業家がメンタルを病みやすい6つの理由

少し前から起業家のメンタルヘルスに関して書かれた記事が散見されると思っていて、今日はそこについての話を。
ちなみに、以下のリンクあたりがそれで、これらによると起業家の3〜5割程度がメンタルになんらかの問題を抱えているそうです。
成功話の裏側は語られない ── 世間には知らされない起業家のメンタルヘルス事情
「起業家うつ」増加の実態、メンタルヘルスを損なう6つの事情

実際僕も2014年の夏あたりは結構大変な精神状況で、いやだいやだと思いながらメンタルクリニックに行ってみたりもしたので、そこらへんの経験も踏まえて書いてみます。
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1. ストレスや負荷がでかい
2. 構造的に事業が安定しない
3. 相談できる人が少ない
4. 理解してくれる人が少ない
5. 弱みを見せることが苦手な人が多い
6. 逃げ道が少ない
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1. ストレスや負荷がでかい

もちろん、どこかの会社に属して働くのは楽だ!と言いたいわけではないですが、やはりそこに存在するストレスはやや異なります。
毎月減っていく現金、組織のこじれ、事業将来についての不安。
さらに、多くの場合において(特にうまくいっていない時ほど)経営者のストレスや仕事量は多くなる傾向にあります。

2. 構造的に事業が安定しない

1と関連した項目ですが、スタートアップでは黒字を出さないことが基本です。
Amazonがその最たる例ですが、黒字を出す余裕があるのであれば将来への投資を行い事業拡大速度を上げることを求められるからです。
そうなると事業継続のために資金調達という不安定な選択肢に、企業の将来を委ねる状況に陥ってしまいがちです。

3. 相談できる人が少ない

しんどい時に社長が相談できる相手の選択肢は少ないです。
なぜなら、自分や自社を信じてくれているメンバーに、そこへの不安を漏らすことはよっぽどの信頼関係がないとできないからです。
また、投資家に相談することも難しいと思っていて、なぜならそこで新規・追加投資の芽が摘まれる可能性があるからです。

4. 理解してくれる人が少ない

スタートアップ社長が抱える悩みは少数派で、それを理解してくれる人はほぼいません。
例えば僕も冒頭で述べたようにメンタルクリニックに行きましたが、「資金調達とはなんなのか」について説明して面談時間は終わりました。
もちろん、同じ立場であるスタートアップ経営者であればその悩みを理解してくれる人は多いですが、基本的に彼らも忙しいので毎回頼るのは難しい。
とはいえ僕は彼らを頼ってそこに助けられてきたのでごめんなさいだけどとても感謝しています。

5. 弱みを見せることが苦手な人が多い

僕はオンラインでは真面目で固そうに見えるんじゃないかと思いますが、普段は明るくて冗談ばかり言うようなタイプです。
なので自分の暗い話をするってのがどうにも苦手でしたし、周りの経営者を見てても自分の弱いところを見せられないタイプが多い印象を持っています。
例えば僕は大学受験時の夏に父親が突然死しているんですが、その時も周りの人にはほとんど言えませんでした。
ただ、起業後のしんどい時に「あ、1人で抱えてたら死ぬわ」と思い人に相談できるようになったので、これは起業して起こった良い変化の1つだなーと思っています。

6. 逃げ道が少ない

僕はどこかの会社に勤めている友人が仕事でとても苦しんでいる場合、早めに辞めた方がいいという話をします。
冷たいかもしれませんが、会社はその人がいなくてもなんとか回るしその方の健康・人生のほうが大事だと思うからです。
ただ、その方が会社を経営している場合はなかなかそのアドバイスはしづらいです。
もちろん、その方の人生が大事だということに変わりはないのですが、代表者が辞めるインパクトはその会社にとって非常に大きいので。
とはいえ命よりも大事なものはないのでそこにこだわり続ける必要はないと思っていますが、その選択を取りづらい気持ちは痛いほどわかります。

まとめ

ちょっと長くなったので、そこからどのように立ち直ったかについてはまた改めて書くつもりですし、ここらへんを解決できるサービスを直近でやろうと思ってます。
あと、しんどい方はお気軽に頼ってもらって大丈夫なので遠慮なくご連絡をー!

Vol. 40:ベンチャー企業が契約書締結時に絶対に気をつけたい2つのこと

最初に書いておきますが、契約書締結時においてベストなのは弁護士の方にチェックしていただくことです。
なぜなら、契約書はとても大きな力を持つ故に、会社を一発で機能不全に陥らせることも可能だからです。

とはいえ、全ての契約書をそうやって対応するのは時間もお金もない、というのが法務機能を有さない多くの企業にとって正直なところ。
特に小さな企業であれば経営者が目を通しているというところが実情であると考えています。
そこで、本記事では契約書を経営者が確認する際に絶対に注意しておくべき2点について書いていきます。

1. 賠償について

注意すべきなのは、賠償が発生する対象と条件と範囲とその算出方法です。
例えば範囲についてですが、なんらかのミスがあった際、直接その事象と関係がなくとも、例えばブランド毀損という名目で莫大な賠償金を請求される可能性があります。
なので、賠償範囲についてはそのミスによって直接発生したものに限り、また、その算出方法についても相手方に一任することなく、合理的な、可能であれば双方の協議や第三者によって計算されるべきです。

2. 契約の破棄について

契約がなんらかの枷となってしまった場合、もしくは、理不尽な条項が含まれていると気づいた場合にはその契約の破棄を検討することがあると思います。
しかし、例えば契約破棄は相手方しか行えないという条項がさらっと含まれている場合もあります。
そのため、双方から契約の破棄ができるという条項を盛り込み、また、ビジネスモデルや主体がどちらかによるのですが○ヶ月前の通知で破棄できるという条項も各社の状況に合わせて盛り込むべきです。

他の条項について

書面での連絡がマスト、という条項も多く含まれますが、こちらは内容によっては電子メールでのやり取りでも可、という形にすれば業務の妨げになる可能性が下がります。
あとは、契約内容に関する業務を例えば別会社に投げる、もしくは他社サービスを活用して行う可能性がある場合、そういったことが可能なのかもチェックしておくべきです。
あと、「努力する」とか「最善を尽くしていない」みたいな主観的な表現も、それがなんらかの大きな行動に反映される可能性がある場合は削る、もしくは定量的なものに変更した方がいいです。

まとめ

繰り返しになりますが、最も良いのは弁護士の方にしっかり確認していただくことです。
ただ、それが難しいのが実際だと思うので、例えば1度弁護士の方に見ていただく。
そしてそこでチェック項目を理解してそれからは類する契約は自分でやる、みたいなのも良い手段だと考えています。

あと、上ではこの2つに気をつけろと書いていますが、当然他条項もチェックした方がよいです。
ただ、そこに多くの時間をかけられないのが実情だと思うので、ぜひこちらを頭に浮かべながら確認してみてください。

さらに加えて、契約書類ってのはこちらの言うことが全て通るってことはあんまりなくて、先方との妥協点の探り合いになる可能性が高いです。
その際には、どの点は譲れて、どの点は譲れないのかを明確にした上で交渉に望まないとただただ時間を費やすだけになってしまうので、しっかりとした基準を持って交渉にあたりましょー!

Vol. 38:エクイティファイナンスによる調達を行うべきケースとは

以前も書きましたが、僕が持ってる懸念として「起業 = エクイティファイナンス(第三者割当増資による調達)実行」と考えてる人が最近多いよなというものがあります。
それ故に、それがもたらすメリットやデメリットについてあまり認識せずに進めてしまってるケースをわりと見ているので、ここではどういったケースでエクイティファイナンスを行うべきかという話を。
結論から言うと「会社をめちゃくちゃでかくするぞ!」という断固たる決意がないならばやらない方がいいです。

例えばあなたがサッカーを始めたいと思ったとします。
リフティングをまずやってみようかな、とか、草サッカーチームでも入ってみるか、とか、フットサルを試してみようかな、とか、そこには選択肢がたくさんあるわけです。
ですが、資金を外部から入れることによって、進むべき道は「ワールドカップを目指す」に固定されます。
なぜなら、投資家側は当然ビジネスなので、キャピタルゲインの最大化を目指しますし、スタートアップとは限られた時間の中で急速な成長を目指すための仕組みだからです。
ちなみに僕は某投資家の方に「時価総額1,000億円を目指さないのであれば投資はできない」と言われたことがあります。

そういった覚悟もないままに安易に調達してしまい、自分の人生で優先したいことと事業がずれたとしても、それでも走り続けなくてはなりません。
資本政策は不可逆だとよく言われますが、最も重要な意思決定は”そもそも外部から株式を用いた資金調達を行うか否か”です。

とはいえお金がないんです、みたいなのは筋が通らないと思っていて、想定していなかったイベントの結果として僕は起業後すぐにご出資をいただきましましたが、それに備えて社会人1年目でかなり切り詰めた生活を送り200万円程の貯金をしていました。
また、大学生の頃には15分/日くらいの作業で10万/月くらい稼げてたので、収益化はすぐに可能だとも思っていました。
俺がやったんだからみんなもやれ、という話ではなく、お金がないことは外部からの資金調達を行う理由にならない、ということです。
これを見て無理だー!と思う方は、正直スタートアップを始めてもうまくいかないと思いますし、そのミスマッチは誰も幸せにしない。

僕が創業期の資金調達について相談を受ける際はいつも「あなたが人生でやりたいことはなんですか?」という質問をします。
なぜなら、スタートアップは会社を急激に成長させるための劇薬であり、経営者その他を幸せにするための仕組みではないからです。

とはいえお金が必要だ、というケースはあると思うので、最初は政策金融公庫さんからの借入をお勧めします。
もちろん安易に考えるのはよくないですが、無担保無保証っていうほぼリスクのない状態で千万単位のお金が調達できるので、これをやらない手はない。
こういったお金を使いながら事業のPMFを進めていった方が、調達を行う際にも有利に交渉を進められますし、曖昧であった「起業」というものをより正確に認識できるので、人生のジレンマは発生しづらくなると思いますよー。

Vol.37:East Venturesは最高だ、という話をします

事業相談をちょこちょこいただく中で、「どこのVCがおすすめ or おすすめしないですか?」という質問をいただくことが多いです。
これってしょうがなくて、なぜかというと資金調達ってめっちゃブラックボックスですし、特にネガティブな話は表に出づらいんですよね。

で、僕はそれを聞かれる度に「East Venturesさん(以下EV社)が最高です」という話をしているので、主にお世話になった3名の方について書いておこうと思います。
念のため書いておくと、これはそういう依頼を受けたわけではもちろんなく、僕が勝手にやっていることなのであしからず。
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1. 太河さんがすごい。
2. 大柴さんがすごい。
3. 金子さんがすごい。
4. サポートがすごい。
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1. 太河さんがすごい。
後述するように僕はEV社の皆さんと近くで働いていた時間が長かったんですが、あれだけ実績を持ってらっしゃる方であるにも関わらず、スタートアップの振興のために今も大きな情熱を持って取り組んでいる姿を見て本当にかっこいいなと思ってます。
そして一見クールに見えるのですが和やかに接してくれる方で、話してくださる内容がめっちゃ面白い。

また、起業家のことを第一に考えてくれる方です。
ご出資をいただいた直後に「投資家のことを優先して考えすぎなくていい」と言われたことがあるんですが、ご出資者の立場でそれを言ってくれる方はなかなかいないよなー、と驚いたことを覚えています。
そもそも初回のご出資の時にも初めてお会いして30分くらいで決めていただき、ご出資後もなんらかの業務を強いてくることも全く無く、事業を進めるうえで非常に有難かったです。
2014年ごろにチームを解散した結果、人も、事業も、お金もない、という設立以来一番しんどかった時期に、「原口くんだから」と追加出資をしてくださったんですが、あれがなければ僕は間違いなくここにいないので本当に感謝しています。

2. 大柴さんがすごい
僕らが出資を受けた後にEV社にフェローとして入られたんですが、的確で客観的な意見をいただけてめちゃくちゃ助けられてました。
なんというかとても正直な方であると思っていて、言葉が信じられるんですよね。
僕の至らないところについても他意なく率直に伝えてくれるので、僕も素直に受け止めて改善していこうと思えてました。
アドバイスだけでなく、色々な方のご紹介もいただきとても有難かったです。

3. 金子さんがすごい
年が近いだけでなく、一時期同じ家で共同生活をしていたこともあり、一番フランクに相談させていただいてました。
例えばバイアウトの際にも何度も質問させてもらってとても助けられましたし、投資家としてどう思うのか、という点について色々と聞くことができ勉強になりました。

4. サポートがすごい
僕は厚かましくもこちらの恩恵を最も受けた男だと思うのですが、EV社は出資先用のコワーキングオフィスとシェアハウスを運営されており、長いことそちらを利用させていただいてました。
僕らがいた当時も、六本木駅間近のコワーキングオフィスにはメルカリさんをはじめたくさんの魅力的な企業が籍を置いており、さらにそこまで徒歩で通うことができる環境は仕事に集中する上でめちゃくちゃ有難かったです。
ちなみに、僕は運良く利用が可能でしたが、そうでないケースもあるかと思いますのでご留意ください。
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長々と書きましたが、それ以外にも当時は大学生インターンだった毛利さん、廣澤さんにも色々と助けられていました。
シードでのエクイティ調達を考えている企業の方は絶対に門を叩くべきだと思いますし、それ以外のフェーズであっても相談に行ってみる価値は大いにあると思いますので、資金調達にお悩みの方は連絡してみることをお勧めします!

Vol. 36:創業した会社の代表取締役社長を退任しました

少し前からの話となりますが、バイアウトから約2年が経ち、自身で創業した会社の代表取締役から離れ、今後は顧問として関わっていくこととなりました。
2012年4月に始まった会社ですので、約7年を経て僕と会社との関係は大きな節目を迎えたわけです。
今後は、今までとは少し変わった形でJapan Infoという事業を支えてまいります。

長いようで短いようで長いこの期間を、多くの方に支えていただきました。
簡単ではありますが、この場を借りて感謝を伝えさせてください。
僕が今ここにいるのは、時間の多寡、関係の濃淡にかかわらずあなたのおかげです。
本当にありがとうございます。

創業からここに至るまでの過程については既にまとめているので、ここでは省略します。
その代わりに、まずは僕が今「仕事」ということについて思うところ、そして今後の働き方について書いてみます。

僕は2011年卒でしたが、内定を早めにいただいたこともあり2010年にはがっつりと働き始めていました。
内定先で、当時の新規事業の立ち上げに携わりテレアポと訪問を繰り返す日々。
当時、就職先を考える上で「残業代が出ないこと」を必須条件にしていた僕は、とにかく働きまくりたかった。
20代のテーマを「仕事、仕事、仕事、」に定め、全てとは言わないまでも、ほとんどの時間をそれに費やしていました。

起業してからも、バイアウト後も含めて会社に泊まったことも数知れず。
もちろん、仕事というのはただ時間をかければいいというものではなく、僕の働き方が必ずしも良いものだとは思っていません。
ただ、某投資家の方と「スタートアップって意外と遊んでる人多いですよね」という話をしていた際に、「だから原口さんはバイアウトできたんじゃないですか?」と言われたことは記憶に残っていますし、過去の自分と情熱を燃やしてくれた仕事というものに感謝しています。

ただその一方、失ったものも多くありました。
結婚したいと思っていた彼女にも振られ、体力も落ち、仕事以外の経験をすることもなく約7年という時間をほぼ仕事だけに使ってきました。
なので今後しばらくは、人生の割合における仕事以外の時間を意識的に増やそうと思っています。
そもそも僕は仕事が好きな人間ではあるのでついもっと働きたくなってしまうのですが、30代のテーマを「欲張る」に定めたこともあり人間活動ももうちょっと頑張りたい。

じゃあ具体的にどんなことをやっていくのかについてですが、仕事については既に色々とアイディアがあるのでそれを順次立ち上げていこうかなと。
現在は福岡に拠点を移してもいるのですが、場所に囚われずビジネスをやっていくというのもチャレンジの1つ。
既にいくつか「出資したい」であったり「うちで働かないか」というお声がけをいただいており大変ありがたく感じているのですが、ひとまずは自分の資金で自分の事業を進めていきます。
仕事以外についても、ここ1ヶ月でフルマラソン、東京→福岡引っ越しと1,200キロ自転車横断、海外旅行、と無茶なスケジュールで取り組んでいたんですが、色々なことを進めていくつもりです。

まとめとしてですが、2012年にスタートアップを始めたことは僕の人生において本当に大きかったな、と。
辛いこともしんどいことも山ほどあったけれども、それでもこの道を選んだおかげで自分が「人生でやっていきたいことはなにか」がはっきりと見えるようになりました。
それについては、既に冗長な文章となってしまっているため改めてどこかで。

なんか色々難しい感じで書いてみましたが、僕は今幸せですし、今後もずっと幸せだろうなーという確信に近いものがあります。
オンラインだと堅く見えがちですが、僕の中身はたぶん小学生の頃からあまり変わってなくていつも笑ってる感じなので、ご無沙汰してしまっている方も含め今後も仲良くしてください。
ということで、皆さん改めてよろしくお願いしますー!

Vol.34:”スタートアップ”とは一体なんなのか

前提として、ここでのスタートアップの定義とは、株式割当による資金調達を行った企業と置いています。
結論から言うと、会社を「劇的に」「急速に」大きくするための仕組みであって、それ以上でもそれ以下でもないです。

劇的とはどれくらいの成長を指すのかという話ですが、Y Combinatorでは3ヶ月の期間中、週次で5〜7%の成長を求められます。
ちなみに週次で7%の成長を続けた場合、3ヶ月後には約2.5倍、1年後には約35倍、2年後には約1,100倍の規模になっている計算です。

こういった成長を目指すためには、少しずつ利益を拡大して余剰資金を投資に回す、という方法ではスピードが全く足りません。
そのためにスタートアップが何をするかというと、自分たちの将来価値を算定し、株を差し出し、成長のための劇薬となる資金を得るわけです。
そしてアクセルを踏み続け、投下した資本に成長が見合っているかを評価し、そして評価され、新たな劇薬を得るために改めて資金調達に動きます。
そして閾値を超えた企業は上場やセルアウトという中間地点にたどり着く一方、多くのスタートアップは音もなく息を引き取ります。

そもそも、投資家目線では多くのスタートアップ企業は失敗します。
冒頭でも触れたY Combinatorの創設者であるポール・グレアム氏は、成功の定義を40億以上のバリエーションになることとした場合その成功率は7%だと述べています。
つまり、最も優れた投資家集団である彼らですら、”9割以上のスタートアップは失敗することを前提に”考えているわけです。
ただ、多くのスタートアップ創業者は自分はその一握りの企業であると信じて、最初の一歩を踏み出します。
(「なぜ急速な成長を目指さなくてはいけないのか」という点については論点がぼやけてしまうので別の機会に触れます。)

少し違った視点からも話しておくと、スタートアップは経営者を幸福にするための仕組みではありません。
いろんなものを、本当にいろんなものを犠牲にしてその成功に賭けたとしても、それが必ずしも報われる場所ではありません。

だから僕は、今からスタートアップを始めようとしている方に相談を受ける場合、その方が人生で何を成し遂げたいのかを重点的に聞きます。
その目的が世界を変えたいとか、大きな会社を創りたいということであればもちろん応援します。
そうではなく、より多くの時間を得たいとか、年収数千万円を目指したい、というような人であればスタートアップを始めることを僕は勧めません。
ただ、誤解がないようにしておきたいのですが、前者と後者どちらかが素晴らしいということではなく、それぞれが信じることをやればいいんです。

僕はスタートアップという仕組みやそれを選んだ過去の自分にとても感謝していますが、これが全ての人生にとって最適であるとは全く思っていません。
起業や独立なんて秒で決断すればいいと思っていますが、外部に株式を渡すかどうかはめちゃくちゃ熟考した方がいい。
この記事が、なんとなく起業=スタートアップだと思っている方にとって考えを深めるいいきっかけになれば幸いです。

Vol.33:スタートアップ起業家と投資家、立場が強いのはどっち?

議論の的になりがちなこの問いですが、結論から書くと投資家の方が強いです。
理由は以下の4つ。

1. お金を持ってる投資家の方が強い

資本主義経済下においてはお金を持っている方が強いです。
お金を出す側とお金を出してもらう側であれば、当然前者の方が有利。

2. 非実行時のリスクが小さい投資家の方が強い

起業家が資金調達に失敗したらそこに待っているのは破綻です。
しかし、もし投資家がその企業に出資をせずその企業が大成功したとしても「チャンスを逃した」だけであり、それがすぐに倒産に結びつくわけではありませんし、次のフェーズでも再度の出資検討が可能です。

それどころか、もしその企業が結果として潰れてしまったら、出資しなかったことが正解となるわけです。
何が言いたいかというと、起業家の方が崖っぷちに立たされているため下手に出てしまいがち。

3. 場数を踏んでいる投資家の方が強い

1つのスタートアップが上場までに資金調達を重ねたとして、最大で5回程度の資金調達を行います。
しかしその経験の蓄積はあれど各資金調達のフェーズは異なることが多いため、優先株の条件設定などそれぞれの段階において新たな知識のインプットや対応が必要となります。
その一方、投資家の方はある程度定まったフェーズにおいて投資を行うため、過去の経験を次回の投資に活かすことがより容易です。

1回目の資金調達と100回目の出資であれば当然そこには情報格差が生じ、その気になれば投資家がそれを利用して自分たちに有利な条件設定を行うことも可能です。
たまにシードで数十%の株式を投資家に持っていかれたという話を聞きますが、ここらへんが原因。
まぁさすがにその場合は起業家側の知識が不足しすぎているとも思いますが。

4. 選べる選択肢が多い投資家の方が強い

日本国内には、現在約115万もの株式会社が存在します。
その一方、日本ベンチャーキャピタル協会に登録している企業はわずか76社です。
もちろん、CVCやエンジェル投資家なども存在するため実際のお金の出し手はもっと多いですが、これらのバランスは明らかに釣り合っていません。
つまり、より貴重な存在である投資家の方が強いわけです。

まとめ

起業家が投資家に対して有利に話を進めるためには、めちゃくちゃイケてるビジネスを作るしかありません。
しかし、もはやスタートアップ界の伝説ですらあるメルカリさんですら、出資を断られることもあったわけです。

ちなみに、投資家の方は「自分たちの方が強いです」なんてことは絶対に言わないわけです。
さらに、起業家も「起業家と投資家は対等」と一般的に言われていることや、もともと弱い立場であるので「投資家の方が強いです」なんてなかなか言えない。

念のため書いておくと、この文章を通じてどちらかを非難するつもりは全くありません。
ただ、構造としてこのような図式が成り立っているということは理解しておくべきだと考えています。
これは違うだろというご指摘があればぜひコメントいただきたいです。

Vol.32:“スタートアップ村”におけるしがらみと僕の立ち位置について

僕は学生の頃は個人で事業運営を行い、そして2012年にスタートアップ企業を立ち上げ、複数社さまからの資金調達や事業譲渡、バイアウトを経て、現在は投資家の方と直接的な資本関係は持たずに事業を行っています。
また、将来的には自分で再度起業していわゆるシリアルアントレプレナーになるつもりですが、その際には株式による資金調達を行うつもりは特にありません。

次の起業では色んな事業を行うつもりで、その中のいずれかの事業が資本を大きく投下すべきと判断したらそれを行う可能性もあります。
しかし、要するに何が言いたいかというと、スタートアップ村を経験した上で、しがらみに囚われずに自由に動くことができる立ち位置にあるということです。

日本でも盛り上がりを見せるスタートアップシーンですが、僕はそこに多くの問題点があると考えています。
例えば、起業家の方が投資家の方にひどい扱いをされたとしても、なかなか公言できません。
なぜなら、それを明らかにすることによって他の投資家からの調達も含めて難しくなり、結果的に破綻してしまうというリスクを抱えているからです。
匿名であればよいのでは?という指摘もありますが、当然当事者の方同士であれば誰が言ったかは分かるので、それは健全な仕組みづくりのために機能しないわけです。

そこで僕が何をしたいかというと、中立的な立場からスタートアップ村の現状を伝えていくことです。
特定の企業や個人を貶めるのでもなく、ゴシップを広めるのでもなく、ブラックボックスになりがちな情報を発信していきたい。
僕がスタートアップというものに感謝しているということも事実なので、それを通じて多くの人にスタートアップや起業というものがより正確に伝わればなーと考えています。

個人事業主、スタートアップ起業家、バイアウト、そしてエンジェル投資家としての経験もあり、その上でこういった立ち位置で動ける人ってほぼいないと思ってるんですよね。
役割論者ではないけれども、せっかく得た経験を世に還元していくことは面白いんじゃないかなーと思ってます。